国民健康保険証個人カードの動き     2009.12.14

今までの経過と現在のマーケット状況

 健康保険証の個人カードの発行は2001年(平成13年)4月から制度が始まり、北海道釧路市、新潟県長岡市、千葉県富津市、長崎県・佐賀県の一部など、2001年(平成13年)9月−10月から採用が始まった。

 今まで原則1世帯に1枚配布されていた連名式の健康保険証が、家族1人に1枚宛配布されることにより、小型化で常時携帯できること、家族同士が別の医療機関で同時に受診できること、遠隔地などの特別扱いが不要になること等のメリットがある。
 
 現在までに政府管掌、国民健保、組合管掌、共済組合などそれぞれの予算化のできたところから移行している。しかし、旧政府管掌の現社会保険協会扱いの健康保険を除くと、2009年10月末のカード化率は推定で約80%程度と見られる。

 各市町村や国保連合会扱いの国民健康保険について、関東地方を除くと動きは鈍かったが、ここ2年ほどで関西圏が動き始めてやっと全国的な動きとなった。関西、北陸、九州、東北、北海道の一部が動いているが、山形や鹿児島など連合会扱いのものを除くと市町村ごとのばらばらな動きとなっている。特例法の市町村の合併が一段落したことで、08年は多くの市町村が切り替えに動き、夏場には集中的な動きがあったが、今年はさらに更新・補充の動きがここへ来て集中している上に、関西方面で、まだまだ残っているものが動き始めてきた。
 組合管掌や共済組合は特に予算化や偽造防止対策などの点からプラスチックカード化を目指すものもあって、その転換が遅れている。関東地区ではもうすでに3回目の更新が動き始めている。

 政府管掌の旧社会保険事務所扱いのものはここで社会保険事務局と取扱い主体の名称変更があったが、大量でまとまっていたために、価格の安い作成方法での本格的なプラスチックカードになっている。社会保険事務所から社会保険事務局へと名称変更で09年末までにほぼ全量が作り変えられた。

 基本は2年毎の更新となっているが、紛失や毀損も多いために、比較的に再発行の割合が多くなっていて、市町村によっては期限を書き込んで有効期限6ヵ月もあり、毎年一部づつの更新をしているケースも増加している。すでに2回目、3回目の再版をしている自治体もあって、全体として順調に増加している。

 カード化の初期に業者間の価格競争が激しく、大手の中には1回目に採算割れのダンピング価格で受注し、2回目で値上げを提示できないために、指名されても再見積もりに応じないところもでていた。08年末から原紙・フィルム等の値上がりがあったために、全体としてコストが上がっており、また、偽造防止加工技術やホログラムの添加等のレベルアップも必須条件になるなど、工数が増加し、コストアップの材料となっている。

臓器移植の意思表示カードと、倍寸2連式の保険証の採用

 2008年度からQRバーコード採用の予定であったが、2011年度実施予定で共通保険TCカードの採用計画が出てきたことで、QRコードの採用は中止となり、また振り出しに戻っている。

 さらに、近年臓器移植の国民的な意識高まりから、本人の臓器移植の意思表示を記入するという動きが現れ、カードの裏面に省略型の記載面を作っているものもあるが、スペースからは不完全で、どうしても従来型のカードの大きさでは不可能になり、何らかの手段で追記が必要になったことで、倍寸の用紙が使われているものもある。

 倍寸サイズの用紙は、すでに神奈川県と千葉県の一部では縦2倍サイズが使われ始めており、横2倍サイズも、一部では動きが出ている。何れにしても、最終の封かん封入の時点では、封筒の大きさと定形郵便物の大きさの範囲に収まることが条件に設定される。

 従来から「記入欄の文字が小さくて読みにくい」とか「記入欄を大きくしてほしい」との要望があり、市町村によっては注意書きを別パンフレットで配布しているような所もあるようだが、今回の動きで、プラスチックカードなどでは折りたたみ形式が使えないために、裏面に記入するとともにカードケースとして小さな袋を添付して、その袋に注意書きを入れるものもでている。

 2つ折りタイプには縦2つ折り型、横2つ折り型の2種類があり、それぞれに連続用とカット判用(即時発行用)がある。記載面を多くするために2つ折りにして、標準の大きさになるように設計された2倍サイズ、カット判はA4判で3面付けのほかにA5判もあるが、用紙トレーからの自動給紙するためにはカールのない用紙が必要となる。カードのための用紙は、部分的に凹凸がなく、しかもカールのないものが要求される。

<カードの形態と特徴>

 カードの形態としては、現在ICカード、本格的なプラスチックカード、簡易紙カード、(PETなどの薄手カードを含む)の3種類がある。それぞれの特徴としては、

1.ICカード
…高機能・ハイセキュリティ、記憶容量が多い、一枚単価は高い。一部の健康保険組合で採用しているが病院や医療機関などのインフラ導入は遅れている。データ容量8K〜16K、特殊プリンター必要。個人データ書き込みの発行コストは特殊な耐摩擦性リボン使用のために高い。
 将来、社会保険ICカードで統一すればこのカードが使われるために、大型の受注に備えてすでにセキュリティの伴ったソフトの開発が進行している。ただ、個人情報の問題などで、住民基本台帳カードとの統一が難しいうえに、国民背番号制の実施なども条件となりそうなので、各省庁間の協力や環境のインフラ整備が難航している。

 本番の実施に備えて、09年の年末から千葉県鴨川市、三重県名張市、和歌山県海南市、島根県出雲市、高松市、福岡県前原市・大野城市、長崎県大村市の7ヵ所で実証実験がされる予定になっているが、来年度予算の積算計上の仕分け段階で1年先延ばしの案が出ており、仮に実証実験が予定通りに行われても、予算の問題やシステム間の統合・情報提供の細部の煮詰めと、最大のポイントになるインフラ整備に付いてはすべてがこれからのスタートなので、当初予定の11年度からの実施は不可能で、大幅に遅れることだけは確実になっている。

2.プラスチックカード
(クレジットカードと同じもの)…耐久性あり、磁気によるデータ情報可能だが、健康保険証では磁気データは利用していない。単価は中程度だが、印字には特殊プリンターが必要でコストが高い。

3.簡易型紙カード
…ラミネート加工により耐久性保持。バーコードにより情報可能。単価はもっとも安い。表面基材はNIP紙の他に、ユポ・ピーチ・オーパなどの合成紙や、発泡ペット素材など、プリンター適性があれば選択が自由である。一般の連続紙レーザープリンターで印字可能。
 ただし、ヒートロールタイプなども含めて各種のレーザープリンターには定着温度や紙送りに特徴があるために、それぞれに対応した種類を選ぶ。しかし、印字適性やダイカット・マイクロミシンなどの加工適性と、表面強度が弱くて、紙剥けしやすい素材もあるので、その選択には注意を要する。

 大量発行のものは連続紙で、随時発行のものはA4判等のカット判プリンターで発行する形式が増加している。この場合の用紙はまったく同じ形式のものをそれぞれのプリンター対応に作成する必要がある。カット判プリンター用紙はそのプリンターに合わせたカールやフィード特性など技術的に難しいポイントがある。

<紙カードの種類>

一括発行印刷用、(連続プリンター用紙)

 更新時期(多くは4月と10月)に一斉に作成、郵送される。一時期に集中するために、そのほとんどが発行業務を外部委託で処理している。

1.片面ラミカード(裏面上質紙タイプ)


 もっとも一般的なもので、一括大量処理に特性を発揮する。印字面にラミネートはなく、裏面のみラミネートがしてある。

 用紙に対する定着温度やストレスの与え方で、用紙のフィードに障害が発生する恐れもある。はがれ防止仕様もあって、裏面剥離台紙に周囲の強度接着が施され、IBM・日立などヒートロールタイプを含む高速プリンターにも対応しているものもある。これにより、フラッシュ・ヒートロールなどあらゆるレーザープリンターに使用可能となった。

 プリンターによっては裏面のフィルム使用に支障があり、このタイプに限定されるものもある。インクジェットプリンターについてはそのプリンターの特性にマッチした材質を選定する必要がある。

2.片面ラミカード(裏面フィルムタイプ)


 様式は1とまったく同様だが、裏面が透明フィルムもしくはマットフィルムとなっている。裏面が見えることを特長としているが、その分紙よりもコストが高く、特にヒートロールタイプのプリンターでは定着時の高熱でフィルムの接着がはがれてトラブルとなりやすいために、はがれ防止機能などの対応が必要になる。会社によっては大きなフィルムを貼ったりして剥がれを防いでいる。
 配布後に裏面に住所を記入しなければならないものでは裏面のラミネートフィルムがマット加工されていて、フィルムの上から書き込み記入ができるものがある。

3.両面ラミカード(即時反転型)


 表面に印字後、ラミフィルムを貼りあわせることで、両面ラミカードができあがる。印字部分を剥離して、反転させるものがある。印字作業後にその場で器具を使わずに表面のラミネートができるため、窓口で即時両面ラミネートの保険証発行が可能となる。

4.
このほかに、NIP紙でなく、カードの耐久性をあげるために、ユポやその他の合成紙、発泡PETなどの薄い素材から作られたカードをNIP紙の上に貼り付けたものも、多数使われている。このタイプはカード部分が高くなるために、プリンターによっては印字やフィードに制約があるので、事前にテストをすることが必要である。

随時発行印刷用、(カット判・A4プリンター用単票)

 転居や退職・紛失・汚損などの理由で更新時期以外に発行する。窓口でその場で発行し、手渡しする。一括発行用と同一のデザイン・形状用紙が原則。

1.カット判対応フラット型 即時発行用
 A4判などのカット紙のプリンターを使うと、その場で1枚づつ印字し、すぐ配布ができる。転入や紛失・再発行などのように窓口で即時発行用には便利な用紙である。A5/A4判でプリンターの用紙トレーにセットして自動給紙ができるカールのない用紙、富士ゼロックス社との共同開発品。

<偽造防止機能とデザイン上の特徴>

 初期の段階ではほとんど問題にされなかった偽造・変造の防止機能だが、健康保険証が消費者金融などで身分証明書代わりに使用されることが多く、他人が使用する「成りすまし」やコピーなどによる偽造品・変造品などの被害が多発した事で、偽造防止機能が必須条件となった。

 従来は価格重視から安ければ良いと言う発注者の考え方が多く、偽造防止機能は不要としていた自治体が多かったが、問題が発生してからは消費者パワーの高まりからか、コストアップでも偽造変造防止機能を充実させることが重要として認知され始め、自治体側から偽造防止機能のレベルアップを要求されるケースが増加している。

 そのために、印刷会社側の技術的な対応が問題とされるようになったが、大手でも、これらの偽造防止技術にはレベルの低い未熟な会社もあるので、必ずしも大手が優れているわけではない。中小でもそれなりの技術があれば認められる。高度な偽造防止技術の採用については、本格的な技術力の競争となっている。これら商品に価格のみでない差別化の動きが出たことは大変に好ましい動きである。
 
 現在の健康保険証では、各種の偽造防止機能やコピー制御システムのうちで、1種類でなく、必ず何種類かが使用される。この部分が印刷会社の技術レベルを判断する重要なポイントになってきている。多く使われている技術には
 
1.複写するとコピーとか複写の文字が浮かび上がる「コピー制御」。
2.複写すると文字が小さく判読できなくなる「マイクロ文字」。
3.細紋や地紋を使用して、製版のレベルを上げて、複写不能にする。このタイプでは、最近新しいデザインが増加しており、高度な偽造防止のレベルとなっている。
4.ホログラムや地紋等でコピーできなくして、複製使用を防ぐ。
5.色で変化する示温インキや特殊インキなどを使用し、指で触ったり、紫外線(ブラックライト)などで真贋の判別をする。
6.特殊インキや特殊紙などを使用し、複写や再製造を不可能にする。    
7.プリンターのソフトを利用し、特殊なコードや隠し番号などによって、本物の確認をすることができる。

 コンピュータ応用の細紋や輪郭、地紋等によって、再製造不可能なグレードの高い印刷物を製版することで、偽造印刷物をシャットアウトすると同時に、本物と偽物の判断基準を明確にして、見て判別できるようにすることが重要である。現在当グループで使用されている偽造防止製版技術は、紙幣等に使用されるわが国屈指の偽造防止技術と同等の最高レベルのものが使用されている。

<カード加工技術> カード製造のための設備

 フォーム印刷機で印刷したものをダイカットしたり、ラミネートしたりして、健康保険証カードは作成できる。印刷→ラミネート・貼り込み→ダイカットの手順で作成できるが、印字品質を維持するためにはラベリングやダイカットの厳しい精度が要求される。一般に市販されているラベリングマシン程度では精度が維持できない。

 株式会社昇寿堂とエニカ株式会社、王子タック株式会社のカード加工へ向けての技術開発は1990年(平成2年)頃から始まったもので、設備の導入と同時に材料の開発を進め、新しい材料はすでに20点に達し、関連する特許や実用新案の出願は50点を数える。
 近時は健康保険証の他に、各種会員証、両面ラミカード、新たに動き出したRFIDの加工にもこれらの材料・技術が生きている。

<カード作成の材料> プリンター用紙に貼ってラミネートのできる材料

 NIP用紙の裏面に貼って、表面からダイカットすることで、保険証カードを作成することができる。専用のラベリングマシーンがなくても、加工機によっては製造可能。そのための特殊機能材料(巻取紙)は下記代理店を通じて販売している。 

 専用加工材料の取扱代理店
 国際紙パルプ商事、日本紙パルプ商事、新生紙パルプ商事、旭洋紙パルプ、はが紙販、吉川紙商事の全国本支店。

 製造、販売に関する問い合わせは下記まで
株式会社 昇寿堂 東京都江東区牡丹3-33-6 電話03-3642-4591
エニカ株式会社 東京都千代田区二番町11-9花ビル 電話 03-3221-0137
王子タック株式会社開発部 東京都中央区銀座5-12-8 王子製紙1号館 電話 03-3248-3463